年末が近づくと、「含み損の仮想通貨を売っておいたほうが税金が安くなるって本当?」「年内に円に換えておくべき?」という疑問がわいてくる方も多いと思います。
私も暗号資産を長く保有しているので、毎年この時期になると「今年の損益はどうなっているかな」と気になります。仮想通貨の税金は1月1日から12月31日までの1年間で計算されるため、年内にできる対策は年内にしか打てません。
この記事では、仮想通貨の「損出し」と「円転」について、それぞれやるべきケース・やらなくてよいケース、そして見落としがちな注意点(特に「総平均法」で計算している場合の落とし穴)を、初心者の方にもわかるように解説します。
※この記事は一般的な仕組みの解説で、個別の税務アドバイスではありません。ご自身の状況での判断は、税務署や税理士にご確認ください。
そもそも「損出し」「円転」とは?
損出し(そんだし)とは、値下がりして含み損(売っていないので確定していない損失)が出ている仮想通貨を売却して、損失を確定させることです。同じ年に別の仮想通貨で利益が出ていれば、その利益と損失を相殺して、課税される所得を減らせる可能性があります。
円転(えんてん)とは、保有している仮想通貨を売却して日本円に換えることです。値上がりしている仮想通貨を円転すると利益が確定し、その年の所得になります。
どちらも「年内に売るかどうか」の判断なので、年末に一緒に検討されることが多いテーマです。
年末対策の前に知っておきたい仮想通貨の税金の基本
損出し・円転を考える前に、仮想通貨の税金のルールを簡単におさらいしておきます。
- 原則「雑所得」で総合課税:給与などほかの所得と合算して税率が決まる仕組み(累進課税)で、所得税と住民税を合わせて最大で約55%になります。
- 計算期間は1月1日〜12月31日:年をまたいだ損益は合算できません。
- 損失は翌年に繰り越せない:今年の損失は今年の利益とのみ相殺でき、余った損失は切り捨てになります。
- 給与所得などとは相殺できない:仮想通貨の損失を給与所得と差し引きすることはできません。一方で、同じ雑所得の中(別の仮想通貨の利益など)では相殺できます。
- 売っていない含み益には課税されない:保有しているだけなら、値上がりしていても税金はかかりません。
- 仮想通貨同士の交換も課税対象:ビットコインでイーサリアムを買うなど、円を介さない交換でも利益が確定したものとして扱われます。
つまり、「今年の利益」と「今年の損失」をどう組み合わせるかは、12月31日までに決めておく必要がある、ということです。
なお、暗号資産の分離課税(税率20%)や3年間の損失繰越控除は税制改正で予定されていますが、適用は早くても2028年1月からの見込みで、2026年分の税金には関係ありません。詳しくは暗号資産はNISAで買える?対象外の理由と2028年からの税制改正を解説で解説しています。
損出しはやるべき?効果があるケース・ないケース
損出しは「やれば必ず得をする」ものではありません。効果があるかどうかは、今年すでに利益が出ているかどうかで決まります。
| 今年の状況 | 損出しの効果 | 理由 |
|---|---|---|
| 別の仮想通貨ですでに利益が確定している | 効果が期待できる | 確定した利益と損失を相殺して、課税される所得を減らせる |
| 利益が確定していない(売却していない) | ほぼ効果なし | 相殺する利益がなく、損失は翌年に繰り越せないため切り捨てになる |
| 利益はあるが、損出しをしなくても20万円以下に収まる会社員 | 効果は限定的 | 所得税の確定申告が不要になる場合があるため(住民税の申告は別途必要) |
損失が利益を上回った場合、上回った分は翌年に持ち越せません。損出しをするときは、「今年の利益を打ち消すのに必要な分だけ」を目安に考えるのがよいと思います。
【要注意】総平均法だと、年内に買い戻すと損出しの効果が薄れる
損出しで一番見落としやすいのがここです。「売って損失を確定させて、すぐ買い戻せば、保有量は変わらずに節税だけできる」と考えがちですが、損益の計算方法によっては期待どおりになりません。
仮想通貨の取得価額(買った値段)の計算方法には、総平均法と移動平均法の2種類があります。
- 総平均法:1年間に買った仮想通貨の合計金額を合計数量で割って、年間の平均取得単価を出す方法。個人の場合、届出をしなければ自動的にこちらになります。
- 移動平均法:買うたびに、その時点での平均取得単価を計算し直す方法。選ぶには税務署への届出が必要です。
わかりやすいように、今年はじめてある仮想通貨を買ったケースで計算してみます。
- 今年のはじめに10枚を1枚10万円で購入(合計100万円)
- 年末に1枚7万円まで値下がりしたので、10枚すべて売却(売却額70万円)
- 保有を続けたいので、同じ日に1枚7万円で10枚を買い戻し(合計70万円)
移動平均法の場合:売却した時点の取得単価は10万円なので、損失は70万円−100万円=−30万円がそのまま確定します。
総平均法の場合:年間の購入は合計170万円・20枚なので、平均取得単価は8.5万円になります。売却した10枚の損失は70万円−85万円=−15万円にとどまり、想定していた損失の半分しか確定しません。残りは、買い戻した10枚の取得単価(8.5万円)に含まれたまま来年に持ち越されます。
このように、総平均法で計算している場合は、同じ年のうちに買い戻すと損出しの効果が小さくなります。「損出しをして同じ銘柄を持ち続けたい」と考えている方は、ご自身がどちらの方法で計算しているかを先に確認しておくことをおすすめします。
なお、移動平均法に切り替えたい場合は、原則としてその年の3月15日までに届出が必要で、2026年分の計算方法を今から変えることはできません。また、一度選んだ方法は原則として3年間は変更できないため、切り替えは慎重に検討しましょう。
円転はやるべき?年内に利益確定するか、来年に回すか
次に円転です。まず押さえておきたいのは、円転そのものが節税になるわけではないという点です。値上がりした仮想通貨を円に換えれば利益が確定し、その年の所得になります。
そのうえで、年末に円転を考える主なケースは次のとおりです。
- 利益を年ごとに分散したい:総合課税は所得が大きいほど税率が上がるため、1年にまとめて利益確定するより、年をまたいで分けたほうが税率を抑えられることがあります。今年すでに利益が大きい場合は、追加の利益確定を来年1月以降に回すという考え方もあります。
- 今年は所得が少ない:逆に、今年はほかの所得が少なく税率が低めになりそうな場合は、今年のうちに一部を利益確定しておく考え方もあります。
- 20万円ルールを意識したい:年末調整を受けている会社員で、給与以外の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要です(住民税の申告は別途必要)。ギリギリのラインにいる方は、利益確定を来年に回すかどうかで手続きが変わります。
一方で、「2028年ごろに分離課税になるかもしれないから、それまで利益確定を待つ」という判断は慎重に考えたいところです。制度の詳細や適用時期はまだ確定しておらず、その間に価格が大きく下がるリスクもあります。税金だけを理由に売買のタイミングを決めるのではなく、ご自身の投資方針とあわせて判断するのが大切だと私は考えています。
年内に損出し・円転するときの注意点
- 年末ぎりぎりは避ける:年末年始は取引所のメンテナンスや注文の混雑が起こりやすく、思ったタイミングで売れないことがあります。12月中旬までには方針を決めておくと安心です。
- 取引コストを確認する:販売所で売買するとスプレッド(買値と売値の差)が実質的なコストになります。損出しと買い戻しで、節税額よりコストのほうが大きくなっては本末転倒です。
- 強制売却も今年の損益に含まれる:取扱廃止になる銘柄を持っていて、取引所に強制売却された場合も、その損益は売却された年の所得になります。取扱廃止の動きについては暗号資産の上場廃止が止まらない理由と、対象銘柄を持っていたら今すぐやるべきことで解説しています。
- 複数の取引所の損益は合算する:A社で利益、B社で損失が出ている場合も、1年分をすべて合算して計算します。取引所ごとの画面だけでは全体の損益がわかりにくいので注意しましょう。
- ステーキング・レンディングの報酬も所得になる:受け取った報酬も雑所得に含まれるため、年間の利益を見積もるときは忘れずに含めましょう。
年内の損益は、損益計算ツールで先に確認しておく
損出しや円転を検討するうえで一番大事なのは、「今年、今の時点でいくら利益(または損失)が出ているのか」を正確に知ることです。これがわからないと、損出しがどれだけ必要なのか、そもそも必要なのかを判断できません。
とはいえ、複数の取引所を使っていたり、仮想通貨同士の交換やステーキング報酬があったりすると、手作業で計算するのはかなり大変です。そこで便利なのが、取引履歴を取り込むだけで年間の損益を自動計算してくれる損益計算ツールです。総平均法・移動平均法のどちらでも計算できるので、「買い戻したら損益がどう変わるか」を確認するのにも役立ちます。
損益計算ツールの選び方はクリプタクトとGtaxが統合!暗号資産の確定申告ツールはどう選ぶ?、具体的な使い方はクリプタクトの使い方を解説!取引履歴の取り込みから損益計算・確定申告までで詳しく解説しています。
▼クリプタクトの登録はこちら
Cryptact
よくある質問
Q. 損出しした仮想通貨を、すぐに買い戻してもいいですか?
買い戻すこと自体は可能です。ただし、個人で届出をしていない場合は総平均法での計算になり、同じ年のうちに買い戻すと確定する損失が小さくなります。損出しの効果を確認したい場合は、損益計算ツールでシミュレーションしてから判断するのがおすすめです。
Q. 仮想通貨の損失を、会社の給与と相殺できますか?
できません。仮想通貨の所得は原則として雑所得で、給与所得など他の区分の所得とは損益通算できません。相殺できるのは、同じ雑所得に含まれる利益(別の仮想通貨の売却益など)に限られます。
Q. 今年の損失を来年の利益と相殺することはできますか?
現行のルールでは、仮想通貨の損失を翌年に繰り越すことはできません。税制改正で3年間の繰越控除が予定されていますが、適用は早くても2028年からの見込みです。
まとめ
仮想通貨の年末の税金対策についてまとめると、次のとおりです。
- 損出しは、今年すでに利益が確定している場合に効果が期待できる。利益がなければ損失は切り捨てになる
- 届出をしていない個人は総平均法で計算されるため、同じ年に買い戻すと損出しの効果が薄れる
- 円転そのものは節税ではなく、利益確定のタイミングを「今年か来年か」で調整するもの
- 年末ぎりぎりはメンテナンスや混雑のリスクがあるため、12月中旬までに方針を決めておく
- 判断の前に、損益計算ツールで今年の損益を把握しておくのが第一歩
私自身、年末に慌てて計算するより、11月ごろに一度損益をざっくり確認しておくほうが落ち着いて判断できると感じています。まずは今年の取引履歴を整理して、現時点の損益を確認するところから始めてみてください。
▼クリプタクトの登録はこちら
Cryptact
※税金の取り扱いは個別の状況によって異なります。具体的な判断にあたっては、税務署や税理士にご相談ください。